アカメカブトトカゲってどんなトカゲ?

アカメカブトトカゲは、そのゴツゴツした鱗と、目の周りの赤い縁取りが特徴的なトカゲです。また、爬虫類の中ではかなり珍しい「声帯を持つ」という特徴を持ち、かわいい鳴き声も魅力の一つです。まるで小さな恐竜のような見た目も相まって最近ではペットとして非常に人気があります。

大人しい性格で、あまり素早く動かないため、落ち着いた観察を楽しみたい方におすすめです。しかし、かつて「死にトカゲ」と呼ばれたほど飼育難度は高く、正しい飼育知識が不可欠です。

飼育に必要なものと快適な環境の作り方

アカメカブトトカゲが健康に過ごすには、彼らが本来暮らしている環境を再現してあげることが大切です。

1. ケージと床材

・ケージ: 幅45~60cm程度のガラス製ケージがおすすめです。脱走防止のため、蓋はしっかりとロックできるものを選びましょう。
・床材: 湿った環境を維持するため、ヤシガラマット、水苔、腐葉土などを混ぜたものを使用します。常に湿らせた状態を保つことがポイントです。

2. 最も重要な温度と湿度管理

アカメカブトトカゲは高温に非常に弱く、他のペットリザードに比べ若干の低温を好みます。

温度:

・ホットスポット: 25~28℃
・クールスポット: 24〜26℃

湿度:

70~90%という高い湿度を維持する必要があります。
ケージの外から全体を温めるパネルヒーターや、夜間用のセラミックヒーターが適しています。湿度は、1日に数回霧吹きをしたり、大きな水入れを設置したりして調整しましょう。

アカメカブトトカゲの餌と隠れ家

3.餌(食事)

アカメカブトトカゲは昆虫食です。
・主食: コオロギ、デュビアなどが適しています。
・添加剤: 餌には、必ずカルシウムパウダーやビタミン剤をまぶして与えましょう。栄養不足は病気の原因になります。

4.隠れ家(シェルター)

臆病な性格のため、身を隠せる場所が必須です。
・シェルター: ケージ内に流木や植木鉢、水苔を詰めたウェットシェルターなどを複数設置してあげましょう。これにより、ストレスを軽減できます。
※多頭飼いする場合は少なくとも個体数分のシェルターを置くことが、本人たちのストレス緩和につながります。
→一夫一妻制と言われておりナワバリ意識が強いため、ペア以上の多頭飼いは推奨できません。

日常の健康チェックと注意点

アカメカブトトカゲは病気のサインを見せにくい傾向があります。毎日観察する習慣をつけましょう。
・体重:年齢にあった体重の推移ができているか
・脱皮: 脱皮がスムーズに行われているか確認します。
・食欲: 餌を食べているかチェックします。
・体表: 体に腫れや傷がないか確認します。
・目の周り: 目が開いているか、腫れていないか確認します。
何か気になることがあれば、放置せずに早めに爬虫類を診てくれる動物病院に相談しましょう。

まとめ:アカメカブトトカゲとの生活を楽しむために

アカメカブトトカゲは、彼らの特性を理解し、正しい飼育環境を整えれば、飼い主と長く楽しい時間を過ごせるパートナーです。
・温度と湿度(特に湿度)の管理を徹底する。
・隠れ家を多く用意する。
・栄養バランスの良い餌を与える。
これらのポイントを押さえて、アカメカブトトカゲとの素敵な飼育ライフを送ってください。何か困ったことがあれば、いつでも当院にご相談ください。


番外:アカメカブトトカゲの繁殖(ブリード)編


アカメカブトトカゲの飼育に慣れてきたら、繁殖に挑戦してみたくなる方もいるでしょう。しかし、レオパのような代表的なペットトカゲに比べ、まだまだ確立されていないのも事実です。ここでは、実際にアカメカブトトカゲの繁殖をしている獣医師の著者が、必要なポイントを分かりやすく解説します。

アカメカブトトカゲの繁殖に必要なこと

1. ペアリングの基本ルール

アカメカブトトカゲの繁殖は、1つのケージにオス1匹とメス1匹のペアで行うのが鉄則です。
メスは産卵後、他のメスや幼体を攻撃・捕食してしまうことがあります。そのため、複数ペアでの多頭飼育による繁殖は、絶対に避けましょう。


2. 繁殖用ケージの準備

繁殖を成功させるには、ストレスの少ない環境が不可欠です。
・ケージサイズ: 最低でも60×45×45cm以上の広めのケージを用意しましょう。
・レイアウト: シェルターなど隠れられる場所を2ヶ所以上用意し、さらに流木や石などを組み合わせて隠れ家をたくさん作ってあげることが大切です。これにより、ペアが適度な距離を保ち、ストレスを軽減できます。
・床材: 湿ったソイルやヤシガラを厚めに敷き、高い湿度を保てるようにしてください。
・温湿度:爬虫類の生殖周期は主に3つに分類分けされます。著者の体感とアカメカブトトカゲの原産地域の気候から、おそらく「連続生殖周期」であると考えられるため無闇な温度変化はせず、普段の飼育温度を維持すると良いでしょう。


1.アソシエイテッド生殖周期: 生殖腺の活動と交尾・産卵の時期が一致するタイプです。一部のトカゲやヘビでこのパターンが見られます。
2.ディソシエイテッド生殖周期: 生殖腺が活発な時期と、交尾や産卵の時期がずれるタイプです。カナダのアカハラガータースネーク(Thamnophis sirtalis parietalis)が最もよく研究されている例として挙げられていますが、このヘビは冬眠から目覚めた直後に交尾を行います。なお、この時期の生殖腺はまだ活動していません。
3.連続生殖周期: 熱帯地方の爬虫類に多く見られる、年間を通じて繁殖活動を行うタイプです。


産卵床の準備と卵の扱い方

1. 産卵床の設置

メスが安心して卵を産めるように、ケージの目立たない場所に産卵床を準備します。
 →産卵床: 15×15cm程度の容器に、湿らせたバーミキュライトを詰めて設置しましょう。

2. 卵の取り扱い

産卵が確認できたら、卵を小さな容器(プリンカップなど)に優しく移します。このとき、最も注意すべきなのが「卵の天地(上下)」です。
→天地を変えない: 爬虫類の卵は、産み落とされてから24時間ほどで内部の胚が卵膜に付着し、天地が固定されます。ひっくり返すと胚が窒息し、死んでしまうため、採取時に必ず卵の向きを鉛筆などでマークし、そのままの向きで管理してください。

産卵と孵化、そして子育て

1. 産卵と孵化期間

アカメカブトトカゲは、一度に1個(まれに2個)の卵を産みます。
→孵化: 孵化まではおよそ2〜3か月(6〜12週)かかります。この期間、孵化容器の温度と湿度を安定させることが成功の鍵です。

卵の管理
・温度:28°Cにキープ
→下にパネルヒーターを敷くよりも、室温管理の方が安定させやすいです。
・湿度:1日3,4回、バーミキュライトが乾燥する時間を作らない程度に霧吹き
→床材からの水分補給が卵の成長の鍵となりますが、バーミキュライト自体が腐ることも良くないので、床材は1週間に1度、完全に取り替えます。

2. 孵化後の幼体管理

幼体が孵化したら、速やかに親とは別のケージで管理しましょう。
→分離飼育: 自然界ではメスが卵を守る習性がありますが、飼育下では親が幼体を攻撃・捕食する事故が起こりえます。安全に育てるために、必ず親と子を分けて管理してください。
生後半年を迎えることができたら、1歳齢にかけて徐々に成体と同じ飼育方法にしていくのが良いでしょう。


・孵化〜初回脱皮:絶食
・初回脱皮〜6ヶ月齢:毎日食べる分だけ活コオロギSサイズを撒き餌

ケージ環境
・ケージサイズ:30×15×15(広すぎると餌を見つけられません)
・温度:28°C
・湿度:60〜70%
その他、シェルター、石、流木などを用いて外部から見えない空間を多く作ることで、最もストレスに敏感なベビー期を乗り越えます。
※生後半年までの間は可能な限りハンドリング、ピンセットや手からの給餌は避け、余計なストレスを与えず成長を第一に考えた方が良いでしょう。

繁殖に挑戦する方へ

アカメカブトトカゲの繁殖は、他の爬虫類にはない独特な注意点がありますが、正しい知識と準備があれば、幼体を迎えるという素晴らしい経験ができます。
・ペアは1組だけ
・広めのケージと十分な隠れ家
・湿ったバーミキュライトで作る産卵床
・卵は天地を変えずに管理
・孵化後は親と分離
これらのポイントをしっかり守り、安全で楽しい繁殖に挑戦してみてください。


※ちなみに、ベビー明けからベタ慣れさせると手からコオロギを食べるようになります