⚠︎この記事は2023年12月9日までに報告されたデータをもとに作成しています。
最新の情報につきましては随時ご確認いただきますようお願いいたします。
犬の伝染性呼吸器症候群(CIRDC)
現在アメリカで謎の病原体による犬の呼吸器疾患が流行しているのをご存じでしょうか。
従来の伝染性呼吸器症候群(CIRDC)はケンネルコフとも呼ばれ、アメリカでも日本でも日常的に目にする疾患でした。
また、ケンネルコフは子犬で問題になることこそ多いものの、死亡率はさほど高くない疾患です。
しかしながら、2023年8月オレゴン州農務省 (ODA) にて、従来のCIRDCとは異なる犬の感染性呼吸器疾患が報告されました。
現在までに、同様の症状を発症した犬の報告は200 件以上に上ります。
ニューハンプシャー州やコロラド州でも同様の症状を呈する犬が認められ、中には症状の悪化により死亡してしまう症例も認められました。
従来のケンネルコフと今回流行している亜型の違い
従来のケンネルコフは咳やくしゃみ、鼻汁などの呼吸器に関わる症状を呈し、重症化すると発熱、気管支炎、肺炎などの症状に進行してしまうこともああります。
しかしながら、多くの症例は対症療法(咳止めや抗生剤の投与、酸素室での入院)などによって2週間ほどで症状の改善が認められます。
今回の感染流行が問題になっているCIRDCの症例では従来のケンネルコフと異なる3つ症状が報告されています。
① 慢性的な軽度~中等度の気管支炎症状(咳など)が6~8週間以上続き、抗生物質に対する反応がほとんどない、あるいはまったくない。
② 慢性的な肺炎症状を呈し、抗生物質に対する反応がほとんどない、またはまったく反応しない。
③ 24-36時間で急速に重症化する急性肺炎。
現在、オレゴン州農務省、カールソン獣医科大学、オレゴン獣医診断研究所、農務省国立獣医サービス研究所に所属する獣医師や専門家が積極的に原因物質の特定に努めているそうですが、はっきりとした原因物質や流行の原因は未だ解明されていません。
亜型のCIRDCに対する画一的な治療は報告されておらず、酸素吸入、抗生剤の投与、対症療法といった支持治療を中心に現在も現地の獣医師が治療にあたっているとのことです。
また、従来のケンネルコフは呼吸器の症状(咳やくしゃみ)によって伝染することから亜型のCIRDCも同様に飛沫感染によって爆発的に流行してしまったのではないかと言われています。
新型コロナウイルス感染症との関連
現時点ではヒトの新型コロナウイルス(COVID-19)感染症との関連性は否定されています。
また、CIRDCが犬から人にうつる可能性も非常に低いとされています。
予防するには
アメリカ獣医師会(AVMA)は、飼い主に対して犬の混合ワクチン接種による感染予防を勧めています。
現在の症例に対して、既存の混合ワクチンの有効性は不確かですが、爆発的な伝染性をもつ感染症に対して定期的なワクチン接種を通じて流行を防ぐことは非常に大切でrす。
従来のケンネルコフに対する予防として、
・ボルデテラ
・イヌアデノウイルス 2 型
・イヌパラインフルエンザ
の予防効果が認められる混合ワクチンの接種(アメリカでは鼻腔内投与ワクチンも)が推奨されています。
また、伝染性の疾患が万が一身近で流行してしまった際は、愛犬を守るためにも次のような方法を参考にしてみてください。
① 不特定多数の犬との接触を減らす。他の呼吸器病原体と同様に、犬との接触が増えるほど、感染性のある犬に遭遇するリスクが高くなります。
② 病気の犬との接触を減らす。判断が難しいかもしれませんが、咳、鼻水、くしゃみなどの症状がある犬との接触は避けましょう。
③ 万が一呼吸器の症状が出てしまった際は自宅で安静にし、獣医師へご相談ください。
④ 水入れやご飯皿、おもちゃの共用は避けましょう。
⑤ 混合ワクチンの接種期限を確認しましょう。期限が間近あるいは過ぎてしまった際は獣医師へご相談ください。
CIRDCは日本では未報告ではありますが、本記事をご参考にして頂き十分な注意の上日々をお過ごし頂ければと思います。