高齢猫に多い「甲状腺機能亢進症」について
はじめに
「歳をとってから痩せてきたなあ」――猫ちゃんにそんな変化があっても、
「年のせいかな」と思ってしまうことがあるかもしれません。
でも実は、それは病気のサインかもしれません。
今回は、中高齢の猫で非常に多く見られる内分泌の病気、
"甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)"について解説します。
甲状腺機能亢進症とは
甲状腺ホルモンが必要以上に作られてしまう病気で、
代謝が異常に高まり、体にさまざまな負担をかけてしまいます。
特に、10歳以上の猫の約10%がこの病気を発症しているとも言われ、
猫の中で最も多いホルモン疾患とされています。
よく見られる症状
食欲が増える:ご飯をよく食べるようになるが、体重は減ってしまう。
体重が減る:食欲はあるのに、どんどん痩せていく。
活動量の変化:落ち着きがなくなったり、過剰に活発になることがある。
水をよく飲み、トイレが増える:いわゆる「多飲多尿」状態。腎臓への影響も考えられる。
毛づやが悪くなる:毛がぼさぼさになり、毛づくろいもしなくなることがある。
吐き気や下痢:消化器に影響が出る場合も。
中でも特に多いのが、「食べているのに痩せる」という、いかにも不思議な症状です。
目に見えない症状もあります
外見からは分かりにくいものの、以下のような体内の異常も進んでいることがあります。
- 高血圧
- 心臓の筋肉が厚くなる(肥大型心筋症)
- 肝酵素の上昇(肝臓への負担)
これらは放っておくと命に関わることもあるため、
早めの診断と治療が重要です。
診断について
診断には、主に以下のような検査を行います。
- 血液検査(T4:甲状腺ホルモンの測定)
- 甲状腺ホルモンの値が高いかどうかを調べます。
- 一般血液検査・レントゲン・超音波検査など
- 他の病気が隠れていないか、またこの病気の影響がどこに出ているかを確認します。
治療方法
治療にはいくつかの選択肢があり、猫ちゃんやご家庭の状況に応じて選びます。
主な治療法
飲み薬(内服薬):最も一般的。ホルモンの生成を抑えます。
食事療法:ヨウ素を制限した専用フードを与える方法。
放射性ヨウ素治療:異常な甲状腺組織を選択的に破壊します。根治の可能性あり。
手術:異常な甲状腺を摘出する方法。麻酔・術後ケアが必要です。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、獣医師と相談のうえ、猫ちゃんに合った方法を選びましょう。
治療で気をつけたいこと
治療を始めることで、これまで隠れていた病気が見えてくることもあります。特に多いのが慢性腎臓病の発見です。
甲状腺ホルモンが過剰な間は腎臓の機能が一時的に良く見えることがありますが、ホルモンを正常に戻すと腎機能の低下が表面化する場合があります。
このようなケースでは、腎臓病の治療と並行した管理が必要になります。
まとめ
「歳をとったのに、なんだか若返ったみたい」
「ごはんをよく食べて、元気に遊んでいる」
そんなふうに見える猫ちゃんが、実は甲状腺の病気だった…ということは少なくありません。
猫は具合が悪くてもそれを隠してしまう動物です。
少しでも「いつもと違うな」と思ったら、早めに動物病院での相談・検査をお勧めします。