糞便検査ってどんな検査?どういうときに行うの?

糞便検査は便の色・匂い・形を確認したり、顕微鏡で確認したり、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法など特殊な検査を行って、採取した糞便中に存在する寄生虫や細菌などの病原体、または腸内細菌のバランスに加え赤血球や脂肪分、消化不良、異物などを確認する検査です。下痢や血便、便秘などの消化器症状を呈している犬や猫に対して行われる検査の一つです。この糞便検査ですが、どういったタイミングで行われるのでしょうか。主に寄生虫や原虫などは母動物から感染することが多いため、家庭に子犬や子猫を迎えた時や、下痢や軟便、血便などうんちの様子がいつもと違うと感じた時、または健康診断の時に行われます。糞便検査を行うことで外見では分からない内臓の異常や重症度を推定することができるので、便の状態を確認することは大切な検査の一つでもあります。
 

飼っているペットのうんちの採取方法は?

○家庭でできる方法
動物病院に持っていく際は一般的に親指の先くらいの量を採取しましょう。ティッシュペーパーに包んでしまうと水分が吸収されてしまい、正しい検査結果がわからなくなってしまうので、ラップやビニール、あるいは密封することのできる容器に入れて糞便を持参し来院しましょう。また、採取してから時間がたってしまったうんちも正しい検査結果を知ることができなくなることがあるのでできるだけ新鮮なうんちを持っていきましょう。もし、おうちから病院まで持っていくのに時間がかかる際には、冷蔵庫や保冷剤などで一時的に4℃程度に保冷しておくと雑菌の増殖を防ぐことができ、検査しやすくなります(検査精度を高めたいのでなるべく新鮮便をお勧め致します)。下痢などうんちを直接持っていくのが難しい場合ではうんちをしたペットシーツをそのまま持参したり、写真を撮っていき病院で獣医師に見せましょう。

○動物病院で行われる方法
プラスチックの長い採便棒というものを使って行います。これを潤滑油などを用いてお尻の穴に入れて少量の便を採取します。動物に対して痛みはありません。
 

糞便検査の種類にはどんなのがあるの?それでわかる病原体は?

糞便検査の種類には主に大きく分けて①直接法、②浮遊法、③塗抹法、④PCR法、⑤微生物抗原検査などがあります。これらについてその方法とその結果わかる病気について説明します。

①直接法(直接塗抹法)
つまようじの先ほどの糞便をスライドグラスにのせ、顕微鏡で観察する方法です。腸内細菌のバランスや原虫(単細胞の微生物)などを確認することができます。この方法を適応できるものとしてジアルジア、トリコモナス、コクシジウムなどがあります。

②浮遊法
少量の糞便を飽和食塩水で溶かし、浮遊した成分を顕微鏡で観察する方法です。寄生虫や虫卵などを確認することができます。この方法を適応できるものとしては線虫類(犬回虫、猫回虫、犬鉤虫、犬鞭虫)、条虫類(犬条虫、猫条虫、マンソン裂頭条虫)、ジアルジア、コクシジウムなどがあります。また、最近ではジアルジアの検出感度の高い硫酸亜鉛法がよく行われています。

③塗抹法(糞便塗抹検査)
この方法では細菌や原虫などの病原体や炎症細胞、腫瘍細胞を検出することができます。採取した糞便を染色することにより病原体をより分かりやすく観察することができます。

④PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法
外部機関に採取した糞便を送ることでそれに含まれている寄生虫や細菌の遺伝子を調べることができます。糞便からDNAを抽出し、それを検体として病原体の塩基配列に適したプライマーを用いてPCR法を実施し、目的とした遺伝子が増幅されることにより陽性と判断できます。この方法を適応できるものとしてはサルモネラ菌、カンピロバクター菌、ジアルジア、トリコモナス、クリプトスポリジウムなどがあります。

⑤微生物抗原検査
ELISAなどを利用して病原体を検出する方法です。犬パルボウイルスやジアルジアなどに対する検査が行われています。

なお、一回の糞便検査では病原体の特定が困難であるため、これら3つの検査方法を複数組み合わせたり、または複数回実施したりして病気の原因が何であるか特定します。
 
 

まとめ

この記事では糞便検査について説明しました。おうちのわんちゃん、ねこちゃんの普段のうんちの状態を把握することが一番大切です。飼い主にも感染する可能性のある病原体であることも考えられるので、うんちがいつもと違うな、何かおかしいなと思ったらうんちを採取して、できるだけ早く動物病院を受診するようにしましょう。もし便がいつもと違ったら、体調の変化が無くとも何か病気のサインかもしれません。