爬虫類の脱皮不全とは?

トカゲやヘビは、成長や新陳代謝のために定期的に古い皮膚を脱ぎ捨てる「脱皮」を行います。しかし、何らかの原因で古い皮がうまく剥がれずに体に残ってしまうことがあります。これを「脱皮不全」と呼びます。
軽度なものならよく見られますが、放置すると皮膚の壊死や感染症を引き起こし、指や尾が取れてしまうなど、深刻な事態になることもあります。

なぜ脱皮不全になる?主な原因をチェック

脱皮不全は、主に以下の要因が絡み合って発生します。
・湿度不足: 特に脱皮前後には、適切な湿度が必須です。乾燥しすぎていると、古い皮がパリパリになって剥がれにくくなります。
・温度の不適正: 爬虫類の代謝は温度に左右されます。適切な体温が保てないと、脱皮のプロセスがスムーズに進みません。
・栄養不良: 特にビタミンAが不足すると、皮膚の細胞が正常に作られず、脱皮が難しくなることがあります。
・ケージ内の環境: 床材が適切でなかったり、シェルター(隠れ家)や体をこすりつけるための流木などが不足していると、物理的に皮を剥がすことが難しくなります。
・全身性の病気: 寄生虫や脱水、その他の病気で体力が低下していると、脱皮に十分なエネルギーを使えなくなります。
※爬虫類種によって温度、湿度含む適切な飼育環境は大きく違うことがあるので注意⚠️

どこを見ればいい?脱皮不全のチェックポイント

脱皮不全は、体のどこにでも起こり得ますが、特に以下の部位は要注意です。
・指先や爪の周り: 古い皮が残ると血行不良になり、壊死や指の欠損に繋がります。
→「指先が前と比べて黒くなった気がする…」「ヤモリが壁を登るのが下手になった(落下するようになった)…」
・目の中、周り: 目の上に古い皮が残ると、視界が悪くなったり、炎症を起こしたりします。
→「目の開きが悪い気がする…」「目の中に白いものが見える…」
・尾の先端: 指と同様に血流が悪くなりやすく、変色や壊死が進行することがあります。
・体の側面や四肢: 皮が何層にも積み重なって、まるで鎧のようになってしまうことがあります。
・鼻や総排泄孔: 皮が詰まると呼吸や排泄が妨げられることがあります。

どう対処する?脱皮不全の応急処置と治療法

軽度な脱皮不全の場合(自宅でできるケア)

・湿度を上げる: ケージ内の湿度を上げたり、保湿シェルター(水苔などを入れた隠れ家)を設置したりしましょう。
・ぬるま湯で温浴: 37~38℃のぬるま湯に5〜10分ほど浸からせ、古い皮を柔らかくします。※絶対に無理にこすったり、剥がしたりしないでください。
*眼球や口腔など自宅でのケアが難しい箇所に関しては早期にご相談いただくことをおすすめします

重度な脱皮不全の場合(動物病院での治療)

・壊死や感染の疑いがある場合: 迷わずすぐに動物病院を受診してください。
・治療: 専門家による処置が必要です。抗菌薬や消毒薬、壊死組織の除去など、適切な処置が行われます。
ご自身での判断が難しいと感じたら、まずは一度動物病院にご相談ください。

脱皮不全の予防策

毎日のケアで脱皮不全は十分に防げます。
・温度・湿度管理: ケージに温湿度計を設置し、生体に合った温度・湿度を常にチェックしましょう。
・保湿シェルター: 多くの爬虫類にとって、脱皮の助けとなるため、設置をおすすめします。
・バランスの良い食事: 適切な栄養を摂ることで、健康な皮膚を保つことができます。
・健康チェック: 定期的に体重を測ったり、体を観察したりして、全身の状態を把握しましょう。

まとめ

脱皮不全は、日々の飼育環境を整えることで予防できる、身近なトラブルです。放置すると深刻な結果を招くこともあるため、日々の観察が非常に重要です。
「指が黒ずんでいる」「目の開き方がおかしい」など、何か気になることがあれば、お早めに当院にご相談ください。私たち獣医師が、大切な家族の健康を守るお手伝いをさせていただきます。