トカゲのオスにある「ヘミペニス」とは?
トカゲのオスは、交尾器として一対のヘミペニス(半陰茎)を尾の付け根に収納しています。交尾の際に反転して体外に露出しますが、通常は交尾が終わるとすぐに体内に戻ります。
このヘミペニスが、何らかの理由で体内に戻らなくなったりあるいは飛び出してしまったり、異物が詰まったりするトラブルが飼育下では時折見られます。これらのトラブルは、見た目ですぐに気づくことができるため、日頃の観察が非常に重要です。
トラブル1:ヘミペニス脱(脱出)
どんな症状?
ヘミペニス脱は、ヘミペニスが総排泄腔から飛び出したまま、戻らなくなった状態です。脱出したヘミペニスの粘膜は、時間が経つにつれて充血や腫れがひどくなります。さらに放置すると乾燥してしまい、組織が壊死し、真っ黒に変色することもあります。
主な原因
ヘミペニス脱は、以下のような様々な要因で引き起こされます。
・外傷: ケージのレイアウトや、他のトカゲとのケンカによる物理的な怪我。
・感染症: 患部が細菌に感染し、腫れがひどくなる。
・交尾後:毎日の管理ではどうしようもない場合が多い。
・過度な繁殖活動: 交尾の回数が多すぎる場合。
・基礎疾患: 腹圧の上昇を引き起こすような他の病気(消化器疾患など)が原因となることも。
トラブル2:ヘミペニスプラグ(栓子)
どんな症状?
ヘミペニスプラグは、ヘミペニスが収納されている溝に、固いチーズのような、または蝋のような塊が詰まってしまう症状です。この塊は、剥がれ落ちた古い皮膚の細胞や分泌物が蓄積して形成されると考えられています。
プラグが詰まっていると、ヘミペニスの開口部が塞がれてしまい、排泄や交尾に支障をきたすことがあります。軽度のうちは、飼い主さんが気づきにくいこともあります。
主な原因
プラグが形成される詳しいメカニズムは完全には解明されていません。しかし、不適切な環境(特に乾燥)や、脱皮不全が関係している可能性も考えられます。
飼い主さんができること:正しい対処法と予防
どちらの症状も放置すると、ヘミペニスの切断が必要になるなど深刻な結果を招く可能性があります。異変に気づいたら、慌てずに以下の対処法をとり、速やかに動物病院を受診しましょう。
自宅でできる応急処置
・患部を清潔に保つ: ぬるま湯で優しく患部を洗浄します。
・乾燥を防ぐ: 患部が乾燥しないように、水で濡らしたキッチンペーパーなどで覆い、保湿してあげましょう。
病院での治療法
・ヘミペニス脱: 獣医師が患部の腫れを抑える処置をした後、優しくヘミペニスを体内に戻します。再脱出を防ぐため、開口部を縫合することもあります。
・ヘミペニスプラグ: 鉗子などを使い、固まったプラグを慎重に取り除きます。
どちらも処置後は二次感染を防ぐ目的で消毒や抗生剤の投与をする場合があります。
まとめ:日頃の観察と早期受診がカギ
トカゲのヘミペニス脱やヘミペニスプラグは、日々の飼育環境を整え、注意深く観察することで予防できるトラブルです。
普段から
・適切な温度・湿度を保つ。
・清潔な飼育環境を維持する。やたらに交尾できる環境にさせない。
・ケージ内のレイアウトを安全なものにする。
など行ってあげることで発生率を抑えられる病態でもあります。
「尾の付け根が腫れている」「排泄の様子がおかしい」など、小さな変化でも見逃さず、すぐに専門の動物病院にご相談ください。早期の対応が、トカゲの健康を守る鍵となります。