犬は人に比べると顎の力が強く、咬む力は小型犬でも人の5倍程、大型犬になると10倍程あると言われています。
対して歯の表面のエナメル質と呼ばれる硬い層は人の1/25〜250程の薄さです。
まとめると犬は人に比べると咬む力が強いのに歯が脆い、つまり歯が非常に欠けやすいのです。
海外の文献では健康な犬の3〜10%、歯の病気がある犬の24%で折れた歯が見つかったというデータもあります。
歯が折れてしまう子は実はたくさんいるのです。
犬の歯で最も折れやすい場所は上顎の第四前臼歯と呼ばれる一番大きな歯です。
この歯は機能歯と言って、食べ物を噛み砕いたり、おもちゃを噛んだりする時に一番よく使用します。
歯が折れてしまう原因として最も多いのが、歯よりも硬いものを噛んでしまうケースです。
具体的には、
・動物の骨や蹄、角
・硬い木
・ヒマラヤチーズなどの乾燥させた硬いチーズ
などが挙げられます。
おもちゃを噛むことは本人の楽しみでもありとても大切な習慣ですが、歯よりも硬いものを与えるのは極力避けたほうが良いと言えます。
具体的な目安としては、文房具ハサミで切れないほど硬いものは与えるのを控えたほうが良いでしょう。
また、これらのおもちゃや金属ケージなどを習慣的に噛んでいる子は奥歯が折れていないかチェックしてあげてください。
余談ですが、ヒマラヤチーズなどの乾燥チーズはレンジで温めることでサクサクふわふわになるので与え方にも工夫が必要です。
犬猫の歯は人と同じく、歯の中に神経や血管が通っています。
歯が欠けてしまい、神経(歯髄)が出てしまった状態を露髄と言います。
歯の折れ方にもよりますが、折れた歯の断面から歯髄腔(写真の青矢印)が見えている場合は特に注意が必要です。
露髄が起こってしまうと、細菌が歯の内部に侵入し、細菌感染が起き、歯髄は壊死し、症状が進むと根の先の炎症「根尖性歯周炎」が起きてします。
これは人で言う虫歯に近い状態で、痛みを生じたり、進行すると歯の根っこが膿んで顔が腫れてしまうこともあります。
このような歯はレントゲンで歯の根っこの病巣を確認し、必要に応じて根管治療や歯冠修復治療などを行う必要があります。
歯が折れているのを見つけた際はすぐに獣医さんに相談しましょう。
また、露髄はしなくても歯が欠けて内部の象牙質が露出してしまうと、知覚過敏などの症状につながると言われています。
いずれにしても欠けた歯は放っておかずに適切な治療を施す必要があります。
欠けてしまった歯はコンポジットレジンと呼ばれる光照射によって固まる歯科用プラスチックで修復します。
また、露髄がある場合は病状に応じて神経を抜き詰め物をする根管治療や抜歯が適応になります。
下の写真は第四前臼歯が折れてしまったわんちゃんです。
片側だけでものを噛むという症状があり、欠けた歯に痛みが生じている可能性があります。
レントゲン写真を確認してみると、青い点線で示した神経が通う歯髄は露出していないことがわかります。
この症例は抜歯や根管は行わず、欠けた歯を修復する歯冠修復を行いました。
歯冠修復後は左右均等に噛むようになったとのことで、痛みの症状は和らいだようです。
しかしながら、コンポジットレジンは元の歯(エナメル質)よりも軟かいため、強度は落ちてしまいます。
歯が欠けてしまうような原因や生活習慣を改めないと再度欠けてしまうため注意しましょう。
愛犬・愛猫の歯が欠けてしまった際はいつでもご相談ください。
問診票を記載していただき日頃のデンタルケアの内容やお口のお悩みを確認します。
続いて口腔内細菌の検査、歯肉の炎症スコア等、麻酔をかけずにできる検査を行い、口腔内環境を確認します。
このカウンセリングを元に皆様に合った治療法を提案させていただきます。
全身麻酔下で歯と歯を支える歯槽骨の状態や欠けた歯が歯髄に達しているかどうかをレントゲン撮影によって把握します。
この検査によって治療内容が決定します。
その後、専用器具を用いて歯を覆っている歯石や歯垢を丁寧に除去していきます。
ラバーダムと呼ばれる防水シートで欠けた歯を覆い、神経からの感染や細菌の混入、薬剤が口腔内に漏れることを防ぎます。
施術後1~2週間で口内環境の確認を行います。
また、担当看護師よりブラッシング指導も行いセルフケアの質を上げて良い口腔内環境を維持していきます。
せっかく綺麗なお口になっても、ブラッシングを怠るといつかは元に戻ってしまいます。
当院の歯科診療と二人三脚で健康なお口の状態を保っていきましょう。
・カウンセリング/口腔検査:¥10,000〜
・歯科レントゲン/歯石除去:¥60,000~(術前検査や麻酔費用も込み)
・歯冠修復:¥30,000~
・根管治療:¥60,000〜
・歯磨き指導:¥1,500~
診療内容