歯石・口臭でお悩みの方へ

歯石と歯周病

歯垢が除去されないまま放置されるとミネラルが付着し歯石となります。
犬の口内はアルカリ性のため、人に比べてミネラルの沈着が速く、歯垢付着後に3~5日程で歯石に変わってしまいます。
歯石は表面が凸凹していて歯垢がつきやすく、さらなる歯石を形成してしまいます。

これらの歯石によって進行するのが歯周病です。

歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性の疾患で、
歯だけではなく歯を支える組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨)が壊れてしまう病気です。

世界的に3歳齢以上の犬の84%が歯周病に罹患しているという報告があります。
また、犬において、歯周病と腎臓、肝臓および心筋の組織学的変化との関連が報告されています。
歯周病は数多くのペットが抱えながら、進行すると全身に影響を及ぼすという恐ろしい病気です。
歯石は歯周病の直接的な原因ではありませんが、歯周病を進行させてしまう原因です。

当院での歯周病治療の特徴

当院では全米動物病院協会(American Animal Hospital Association)及びIVDI(International Veterinary Dentistry Institute)のガイドラインに沿った治療を提供します。

飼い主様一人一人にあった治療プログラムを作成し担当獣医師と、動物看護師が治療にあたります。

一般的な歯周病治療だけではなく、歯周外科治療も可能なため重度に進行してしまったケースで、他院で抜歯と宣告された歯であっても保存が可能なケースも多々ございます。お気軽にご相談ください。

歯周病の進行別の症状・治療

ステージⅠ 歯肉炎

状態:アタッチメントロスがなく歯肉の炎症のみを認める。歯槽骨縁の高さと歯周組織は正常
症状:部分的に歯茎が炎症を起こしていることで、歯磨きの際に出血を認めることがある。ほとんど自覚症状はない。
治療:ホームデンタルケア、歯石が付着している場合は歯肉縁上スケーリングが適応になる場合もある。

ステージⅡ 軽度歯周炎

状態:アタッチメントロスが25%以下、多根歯でステージⅠの根分岐病変を認める。
症状:軽度に歯周組織が炎症を起こし歯肉が後退する。軽度の痛みを生じる。
治療:ホームデンタルケアだけでは治療は完結できず、スケーリングやルートプレーニングが適応になる。

ステージⅢ 中程度歯周炎

状態:アタッチメントロスが25~50%、多根歯でステージⅡの根分岐病変を認める。
症状:歯周組織の破壊と歯肉の後退が進行し、痛みを生じる。
治療:スケーリングやルートプレーニングが適応になる。歯周外科処置によって歯を温存することも可能な段階。

ステージⅣ 重度歯周炎

状態:アタッチメントロスが50%以上、多根歯でステージⅢの根分岐病変を認める。
症状:歯周組織の破壊が重症化し、病的骨折や根尖膿瘍などのリスクが生じる。
治療:歯を温存することが難しく、抜歯が適応になる。

当院での治療の流れ

① カウンセリング/口腔検査

問診票を記載していただき日頃のデンタルケアの内容やお口のお悩みを確認します。
続いて口腔内細菌の検査、歯肉の炎症スコア等、麻酔をかけずにできる検査を行い、口腔内環境を確認します。
このカウンセリングを元に皆様に合った治療法を提案させていただきます。

② 麻酔下歯科処置

全身麻酔下で歯と歯を支える歯槽骨の状態をレントゲン撮影によって把握します。
この検査によって歯周病の進行度合いが判断されます。

その後、専用器具を用いて歯を覆っている歯石や歯垢を丁寧に除去していきます。
その後は歯肉縁下の歯垢をかき出し、目に見えない部分も洗浄します。

③ 歯周外科処置

上の処置でも除去しきれない歯石があった場合は歯周外科処置が必要になります。
 ・ フラップ手術
歯茎を切開して剥離し歯の根っこに溜まった歯石を除去します。

・ 歯周組織再生療法
歯茎を切開して剥離し骨が溶けてしまっている部分に人工骨、穴が開いてしまった部分に自己血液から作成したフィブリンゲルなど添加して組織再生を促す治療法です。

④ ホームデンタルケア

施術後1~2週間で口内環境の確認を行います。
また、担当看護師よりブラッシング指導も行いセルフケアの質を上げて良い口腔内環境を維持していきます。
せっかく綺麗なお口になっても、ブラッシングを怠るといつかは元に戻ってしまいます。
当院の歯科診療と二人三脚で健康なお口の状態を保っていきましょう。

歯石除去・歯周病治療のお費用

・カウンセリング/口腔検査:¥10,000〜
・歯科レントゲン/歯石除去:¥60,000~(術前検査や麻酔費用も込み)
・フラップ手術:¥20,000〜(必要に応じて)
・歯周組織再生療法:¥30,000〜(必要に応じて)
・歯磨き指導:¥1,500~

治療例


こちらのワンちゃんは歯石と口臭でお悩みでした。
左上顎の犬歯とその真後ろの第一前臼歯の距離が近く、間隙に歯垢や歯石が沈着しやすい口内環境です。
歯科レントゲンでは第一前臼歯に中程度の歯周炎が起きており、温存することで将来的な犬歯の歯周病悪化の原因となる可能性が高いため抜歯処置を行いました。


こちらのワンちゃんのお悩みは、過去に他の病院で何度か歯石除去を行ったにも関わらず、
再度歯石が沈着してしまうことです。
歯石除去の後は歯の表面に細かい傷がついてしまうため、実はかえって歯石が沈着しやすくなってしまいます。
そのリスクを最小限に抑えるために、歯の表面を二種類の研磨剤を用いてツルツルに仕上げます。
スケーリングは「やってあげたらおしまい」ではなく、
歯石除去後の食餌指導・歯磨き指導をできる限り行い、良い環境を長持ちさせてあげることが重要です。